コラム37
 
銘茶ができる場所2

5/18発行の第28号の通信で『銘茶ができる場所』というコラムを書きました。

その中で、上質茶ができる条件として、あまり日光に当たりすぎず、適度に霧がかかるなどして日照が遮られる方が良く、そのために山あいの土地がお茶を作るには適しているという内容のことを書きました。みなさん、覚えていますか?

今回は、その続きです。

千年以上前から人類はお茶を栽培してきたわけですが、この間、薬として用いられた歴史もあるものの、原則的には嗜好品として愛飲されてきました。

嗜好品ということは、米や麦などの、人の生命を維持するための基本食料の必要を満たした後に初めて求められるものです。そのため、人は開墾した土地にまず雑穀や野菜を植えました。

水が引きやすくて地味が肥えた土地、つまり利用価値が高い土地には、必ず血や肉になるものを栽培したのです。

一方、お茶は段々畑や低い山あいの、普通の作物が育ちにくい土地に植えられてきました。

現在のように、平坦地にもお茶が栽培されるようになったのは、明治に入って士族(かつて武士階級だった人々)の授産事業として開墾されるようになってからのことです。

そのときも、米や野菜を作るには向かない、水の便が悪くて地味が痩せた土地しかあてがわれなかったため、仕方なくお茶の栽培をしたという経緯があるそうです。

また、お茶の樹の性格として、水はけが良い土地を好みます。雨が降ると水溜りができて、ジトジトするような土地では根が腐ってしまい、生育が悪いのです。

日本の茶園では、茶園を造り直すときに地中に排水路を設置するのが常識になっているそうです。

その他にも、一日の気温の差が大きいという点も大きなポイントです。

このように山あいに茶畑を作ることは、植物の特性としても、社会の要請という点からも"適地適作"だったんですね。

ダージリンに行くと分かりますが、あそこはホントに山ばかりで平地がほとんどない土地なので、お茶以外のものを大規模に栽培するのは考えられません。

他にこれといった産業もない地域なので、ダージリンにとってお茶は、神の恵みなのかもしれません。

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