コラム23
 
ダージリンとストライキ

ここ日本でも春を迎えているように、インド北東部のダージリンに今年も春が来ました。ダージリンの春といえば、僕たち紅茶ファンにとっては「春摘み(ファーストフラッシュ)」の季節です。

なんでも今年は、ダージリン全体で茶摘みが例年よりもかなり早いとのことで、先日、問屋さんが送ってくれた初摘みのサンプルが届きました。なんで今年は、そんなに摘み取りが早いのか詳細は不明ですが、多分、天候による影響で発育が早かったのかもしれません。

さっそく、当店に届いた数種類のサンプルを飲んでみたところ、どーもイマイチな感じでした。それでメールに「○○茶園は、去年の方がずっとおいしかったじゃん‥‥」と書いたところ、「いやー、あれは早摘みでさ、まだ未熟(immature)だったんだよ。今、ストライキの影響でお茶が手に入らないけど、それが終わったらまた新しいのを送るからさ」という返事がきました。

ストライキは、インドの中でも特にカルカッタやダージリンがある西ベンガル州に頻発しています。あの鎌とハンマーを交差させた、ソ連によくあった共産主義のマークの落書きを去年、ダージリン近辺でも時々見かけました。

ストライキといったら、日本ではせいぜいバスや電車などの交通機関が、たまーにやる程度ですが、インドでは(西ベンガル州では)、州政府の政策に抗議して、交通機関はもちろん、商店やサービス業まで、病院や警察、報道関係以外のあらゆる産業がストップする、いわゆるゼネストです。

僕も、去年の五月にインドに行って、ダージリンからカルカッタに戻る列車「ダージリンメール号」に乗っているときにストに遭遇しました。カルカッタまで、あと80キロの地点で列車がストップして、結局、午前6時から午後11時まで足止めをくらいました。(駅の食堂と売店は営業していました。)

その間、何もすることがないので、駅前の商店街を歩いたんですけど、全部の店のシャッターが閉まっていて、人通りもほとんどありません。リキシャも走っていません。その徹底ぶりは大したものです。

「もし、誰かがつっぱって店を営業させたらどうなるの?」とインド人に質問すると、スト破りということで、店は破壊されるだろうとのことでした。

インドでは貧しい人が多いので、政策の変更一つで、文字通り飢える人が出てきます。だからみんな真剣で、ストはおおよそにおいて支持されているような印象を受けました。

それにしてもこの激しいストが、(多分)千万人単位の人口を有する州で、1,2ヵ月に一度のペースで行われているなんて、日本人の感覚では、ほとんど信じがたいものがあります。
 

さて、問題はストライキが紅茶の生産に与える影響です。ストライキの拘束がお茶の製造にまで及ぶのかどうかよくわかりません。しかし、工業製品とは違って、必要な時期に必要な作業をしなくては品質を落としてしまう性質を考えると、「スト免除」を受けている可能性が高いです。

茶園の人々は、みんな一生懸命、紅茶を作っているので「スト実行委員会」にも理解されると思います。(そう願います!。)それに、多くの小事を押しつぶして実現される革命なんて信用できないと思うんですよね、個人的に。(山内)

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